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情報系大学生の記録

【院試】 NAIST 情報科学区分の受験体験記 【2020年度】

 

大学院入試は情報収集が大変(読み飛ばしO.K.)

外部受験をする学生・社会人にとって,大学院入試は高いハードルでしょう.
なぜなら入試に関連した情報が限られているためです.それらの情報は受験のために必要であると知っており,実際に私も困りました……

ではどのようにして情報収集をするべきでしょうか?

たしかに公式の情報は正確ですし,信頼できるでしょう.たとえばNAIST についてはTOEIC L&R の合格者平均点や数学の過去問の例題が示されています.

 

isw3.naist.jp

isw3.naist.jp

しかしながら,上記を例にとってみても出願可能なTOEFL やDuolingo English Test の平均点は現時点(2020/09/01)で非公開ですし,数学の過去問も解答がありません.

 

その一方で,実際に受験を体験した有志の方がブログ等で情報を公開してくださるケースもありました.
とくに数学の過去問題集(解答とセットのもの)をGitHub で公開してくださる方もおり,数学が苦手な私にとってはたいへん参考になる情報でした.

 そのような院試攻略に必要不可欠な情報を参考にしたのですから,私も可能な限り情報を公開したいと考えるようになりました.

本記事の情報は個人の体験記であるため,信頼できるかどうかは怪しいですが,あくまで一個人の体験談として参考にしたり/しなかったりしていただければ幸いです.

 

NAISTってなんだ?(読み飛ばしO.K.)

www.naist.jp

けいはんな学研都市の中核を担う奈良先端科学技術大学院大学をご存知でしょうか?
この記事にたどり着いたあなたであれば,ご存知かもしれません.

いわゆる国立の大学院大学という大学のカテゴリに分類され,これは端的に言えば「学部を持たない,大学院のみを有する大学」です.私も大学生になるまで知りませんでした.

このカテゴリに分類される大学はいくつかあり,教員や理系界隈ではけっこう知名度があります.国立の大学やOIST(沖縄科学技術大学院大学) についてはとくに研究力があるイメージです(あくまでイメージです).

www.mext.go.jp

www.oist.jp

また,京都大学大阪大学の大学院入試で縁がなかった方が受験する大学としても認識があるようで,実際に私の所属する大学(情報工学系)の教員(大阪大 博士後期課程卒)もそのような認識を持っていました.

ただNAISTを含めた一部の大学院大学の名前については,京都○端科学大学に似ており,一般的な認識としてはネーミングからしてアレだと言う意見もちらほら.

……概して,NAIST のブランドイメージについては「一般人には無名で,理系界隈ではけっこう有名」という認識を持っています.

NAIST の評価に関する正確な情報が必要な方は以下の公式の情報を参照していただければと思います.評価すべき点や改善点などが閲覧可能です.

www.naist.jp

お前のプロフィールは? モチベーションは!?

まずは私のプロフィールを晒します.

私は現在,私立大学に通う学部4年生で,情報工学系の学科に所属しています.専門は身バレしそうなので伏せておきますが,学際的な分野とだけ.

私の所属する大学を偏差値という指標でカテゴライズすると,日東駒専産近甲龍あたりの大学です.NAIST の出身大学で比較すれば,大学入学時点ではそんなに賢くないと思います.*1

そしてさらに所属する学科内で無理やり私を測ろうとすると,GPA は約3.5,平均点は約90点です*2.履修する際の指標としては,楽単かどうかではなく,ひたすら自分の実力がつきそうな科目を履修し続けました(これだけ聞くと意識高いですね)

理系大学における評価を学内成績で測ろうとすることはナンセンスに感じますが,NAIST の入試には書類審査において成績表を送付する必要があるため,公開しました.

 

次に私がNAIST を受験しようと思ったきっかけについて.

私は前述の通り,私立の大学に通っています.
そしてかねてより周囲の環境についてひっかかる想いがありました.

もちろん教員にはたいへんお世話になりましたし,さまざまな経験を通して,勉強が嫌いだった私が勉強・研究が大好きな人間にまで成長することができました.感謝しても仕切れません.

それでも,学生の勉強・研究に対するやる気が高い学生の割合少ないです.
そのため(良い意味で)意識の高い学生が集まる環境,つまりNAIST を受験するに至りました.

 

入試の概要

正直にいうと,この点については公式の情報を確認していただく方が信頼できるので良いのですが,コアとなる部分だけ説明させていただきます.

2018年以降,NAIST は先端科学技術研究科という単一研究科です.その研究科の中に以下の3つの領域に分けられます.

  • バイオサイエンス領域
  • 物質創成科学領域 

そこに配属された上で,プログラムを選択?できるようになるとのことです.*3

www.naist.jp

入試は上記3つの領域(区分)に分けられ,実施されます.
私は情報科学区分(日本語)で受験しました.

 

入試の実際と詳細

配点(情報科学区分)

配点は2020年春学期以降について,

  1. 書類審査 50点 (25%)
  2. 英語 30点 (15%)
  3. 数学 30点 (15%)
  4. 面接(小論文を含む) 90点 (45%)
    合計200点満点

です.見ての通り,小論文作成と面接が重要そうに感じます.
以下より,1. - 4. まで順を追って解説します.

 

1. 書類審査

書類審査については謎が多いです.少なくとも公式には,

Q. 学部の成績はどの程度考慮されるのでしょうか?

A. 上記の配点の書類審査に含まれます。評価方法については非公開です。 

と載っているので,この項目で学部の成績が考慮される事実は間違い無いでしょう.

ただこれだけの情報では「どの程度」必要かも不透明*4なので,早くからNAIST を志望している方は,ご自身の大学の各科目でよい成績をあげれるよう頑張ると無難でしょう.

 

2. 英語

英語はけっこう情報があります.
まず知っておくべきは,情報科学区分の英語は「スコア提出による評価」ということです.つまりTOEIC L&R やTOEFL iBT といったスコアがある換算式(非公開)によって点数化されるわけですね.

TOEIC L&R については公式で,

Q. TOEICはどれくらい取れればいいのでしょうか?

A. 合計点で評価しますので必要最低点などはありませんが、2019年度入試では日本語受験の合格者平均が670点ほど、英語受験の合格者平均が820点ほどです。 

 と回答されているので,ある程度参考になるでしょう.

……ただし,2020年3月以降は某ウイルスの影響でTOEIC の現地受験ができないという状態が続いています.秋には実施するものの,受験の可否が抽選によって決まるらしいですw

困っている方は,TOEFL iBT と同様にスコア提出が認められているDuolingo English Test がおすすめです.

実際に私もTOEIC L&R とDuolingo English Test の両者を提出しました.このように2つ以上のスコアを提出した場合については,

Q. TOEIC、IELTS、TOEFL、Duolingo English Test の換算は、どのように行われてますか?

A. 換算式は公表していません。ただし、異なる英語テストの複数のスコアが提出された場合はそれぞれ換算し、最も高い換算値を採用します。 

 と明記されているので,受けるだけ受けたほうがよさそうです.*5

ちなみに現時点でDuolingo English Test とTOEFL の合格者平均点等は非公開です.

 

 3. 数学

数学についても情報が多いです.

まず出題範囲は公式に公開されており,

代数 概ね,下記の Chapter 1 から Chapter 7 まで.
Gilbert Strang, Introduction to Linear Algebra, Fourth Edition, Wellesley-Cambridge Press.
日本語訳: G.ストラング,線形代数イントロダクション,原書第4版,近代科学社
解析 概ね,下記の全範囲.
Serge Lang, A First Course in Calculus, Springer.
日本語訳: S.ラング,解析入門,岩波書店

といった具合に,概ね学部1, 2年で学習する内容を短時間で説明しながら解きます.

ただし本年度の第1回入試はオンラインで開催されたため,例年と比べて解答形式が異なります.それは「カメラの前で代数・解析の必答問題(各1問)を10分で解く」といったものです.

本来の現地受験であれば,下見の時間と解答の時間を合わせて20分程度が用意され,さらに問題もそれぞれ2題のうち1題づつ選択して回答できるようでしたが……

問題を解いてみて「オンラインの方が問題が簡単だった」や「量が少なかった」ということは一切ありませんでした.これについてはびっくりされる方も多いと思うので,あらかじめ知っておいた方がよいと思います.

私の出来具合については後述します.

 

4. 面接(小論文を含む)

先ほど申し上げたとおり,最重要です.数学・英語で挫いても挽回可能なほど配点が大きいです.必ず小論文と面接に力を入れましょう.

小論文と面接については以下の通り公式に言及されています.

願書と併せて、「これまでの修学内容(卒業研究等)」及び「本学において取り組みたい研究分野・課題」の2つの課題についての小論文(-> 小論文についてのQ&A)を提出していただきます。

試験当日は、その提出された小論文に関して、3分以内でプレゼンテーション(日本語または英語)をしてください。ただし、機器は用いず、口頭のみとします。その後、小論文及び出身専攻分野を考慮した情報科学関連の質問を行います。 

(2) 採点・評価基準

面接については、基礎学力、研究に対する意欲、潜在的な研究能力を総合的に評価します。

 上記を踏まえると,「小論文作成」と「面接対策」をしっかり行う必要があります.

とくに小論文作成時のテーマ決めについては,オープンキャンパス等に参加し,研究室の研究対象をしっかり把握するべきでしょう.研究室によっては小論文を公開しているところもあります.

さらに,現役の院生にEメール経由でレビューをしていただくケースもあります.そういったコネクションを作るという点でも,オープンキャンパスは行くべきです.

また聞いた話によると「英語の文献をちゃんと読めているか」もキーとなる模様です.*6

オンライン入試の場合は,上記の「3分以内でプレゼンテーション」は実施されませんでした.時間の都合ですかね?

本番の面接は受験者の実力によって質問内容が変わる模様です.ただ少なくとも,小論文で書いたものをベースに進められていくことでしょう.

 

お前の場合はどうだったの?

上には一般的なことを書きましたが,参考として私の場合を紹介します.

1. 書類審査

前述の通り, GPA が約3.5 で提出しました.私の所属する大学の成績証明書のフォーマットには平均点が記載されていませんでしたので,S, A, B, C (順に4, 3, 2, 1)といった幅のある区分で提出/評価されました.

2. 英語

TOEIC L&R とDuolingo English Test を提出し,前者は3年生の時最初に受験した665点を,後者は同様に初受験したときのScore: 105 (Literacy: 115, Comprehension: 120, Conversation: 80, Production: 65) で提出しました.

TOEIC についてはたくさん勉強したにもかかわらず,某ウイルスの影響で4年生になってから受験することが叶いませんでした.結果としてほとんど勉強していない,3年生の時のスコアを提出しました.

Duolingo については,Speaking とWriting がゴミでしたが,Listening とReading がなんとか持ち上げてくれました.

私はDuolingo の方が高く評価されたのではないかと勝手に思っています.アウトプットが必要なため勉強は大変ですが,比較的スコアは取りやすく,無料でお試しテストを受験できるためおすすめ.

englishtest.duolingo.com

 

3. 数学

結論から言ってダメダメでした.焦りすぎ&時間なさすぎで爆死.

代数と解析が各1問,そのうち小問も多かったのですが,出来具合としては20%ぐらいですかね?

私の場合は解析を先に解き,もたもたしている間にタイムアップ.代数については「こうしたら解けます」で終わりでした.

でも他の人もそうだったのではないかと思っています.

勉強時間については,半年前からマセマで復習を始め,1ヶ月前は過去問演習に力を注ぎました.

www.mathema.jp

www.mathema.jpマセマの微積NAIST の入試で不要な部分も多かったので,他の参考書でもいいかもしれません.線形代数はめちゃくちゃわかりやすかったです.

なんやかんやで15% あるので軽視するべからず.

 

4. 面接

面接は現地実施の場合とほぼ同様に,3名の試験官を前にして質問に答えます.

私の場合は,オープンキャンパスやその他で取り組みたい研究についてお話しさせていただいたことがあったので,比較的スムーズに理解していただけました.

さらに小論文では図表ですぐに研究内容を理解できるよう工夫したためか,反応はかなりよかったように感じます.質問内容は,

  • 過去に作成したプログラムの規模は?
  • 提案手法に類似した研究があるが,どのように新規性をもたせるか?
  • 研究を進める上でこういったハードウェアもあるが,なぜ利用しない方法にしたか?
  • 提案手法以外の応用例はあるか?
  • こういう風にしたらより面白そうだと思う!
  • 大学院を卒業した後の進路は?
  • がんばってね〜

といった具合です.上にない質問(忘れました)もありましたが,文献をしっかり熟読したため難なく答えることができました.

 

結果

数学はダメダメでしたが,小論文・面接をしっかり時間をかけて対策したこと,そしてTOEIC の代わりになる試験を怖がらずに受けたことが功を奏して(?) 合格しました.

情報科学区分の第1回入試の倍率は,結果的に2.0倍前後だったのではないかと思います*7

そして合格の通知と一緒に学生宿舎への優先入居の案内も同封されていました.やったぜ.

これもひとえに,志望する研究室の院生と教員の方々の温かいサポートのおかげです!ほんとうにありがとうございました.

 

追記 2021/04/07: 入試の結果を開示してきました.162/200 でした.寮はおそらくギリギリで入居できたのではないでしょうか(たぶん)

 

以上,参考になるかもしれない個人の受験体験記でした.

はてなブログは初めてでよくわかりませんが,ご意見や要望等ございましたらコメント(?)に書いていただければと思います.

 

 

 

*1:OCや研究室のWeb を調べたうえでの,あくまで私の観測する範囲です……

*2:前者は小数点第二位,後者は一の位を切り捨て

*3:間違っていたらご指摘願います

*4:ご存知の方がいたら教えてください……

*5:スコア提出がない場合は0点とも明記されていますので……

*6:私がNAIST のある教員に聞いた話です.面接官は志望研究室によって異なるため,要確認

*7:受験番号の連番から推測